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 モダンローズ第1号といわれるHT(ハイブリッド・ティー)の薔薇。

 1867年フランスのギヨー(Jean-Baptiste André (fils) Guillot)作出。このバラ以降の薔薇が、いわゆる「モダンローズ(HT=ハイブリッド・ティー)」である。その特徴であるとされる「剣弁高芯咲き」の姿を有している最初の薔薇である。日本では、明治から大正時代にかけて、「天地開」という名前で栽培されていたという。

 花弁の外側が淡いピンク色で、内側はほとんど白色に近い。莟はやや濃いピンク色。開花するまではピンク色だが、開花していくにつれて、花弁の内側の白色が広がるかたちになる。しかし、花弁が全開になることは稀で、花の中心部が見えないまま散ってしまうことが多い。花弁の数も数十枚と多いことから、莟が膨らんでゆくさまは魅力的である。花はその重さからやや俯くような姿になる。莟のときは花茎はまっすぐに立っているが、開花がはじまると徐々に垂れ下がってくる。

 この薔薇は、どこのバラ園にも植えられている。モダンローズ第1号であることを紹介する案内板が立てられていることも多い。現在ではさまざまな薔薇が作出されているので、この薔薇の姿はとくに目を引くほどでもないのだが、この薔薇の由来が日本人の趣向に合っているのだろう。

 しかし、この薔薇を美しく撮影するのはなかなかむずかしい。どこのバラ園にも植えられているとはいっても、1本か2本という場合が多く、訪問したときに咲いているかどうかはわからない。今まで約80ヵ所のバラ園を訪問したが、ラ・フランスは約30か所のバラ園に植えられていた。しかし、たくさん植えられているところは限られている。自然とそういうところに足繁く通うことになる。いちばん多いのは、大阪市中之島公園バラ園、次いで、岐阜県の花フェスタ記念公園、さらに、新潟県の国営越後丘陵公園、京成バラ園。花フェスタ記念公園は、2001年の春から薔薇の写真を撮りはじめて約20年間、ほぼ毎年通っているので枚数が多くなるのは当然かもしれない。中之島公園バラ園は、昨年まで勤めていた会社のすぐ近くだったので、シーズンになると出勤前に1時間か2時間早く着いてよくシャッターを切ったものだった。ここではラ・フランスはきちんと1枠を割り当てられていて、いつも元気に咲いていた。京成バラ園では、ラ・フランスのほか、「ホワイト・ラ・フランス」や「レッド・ラ・フランス」なども同じ場所で見ることができる。国営越後丘陵公園では、やや寒冷地にあるせいか、花の状態が良く保たれている場合が多く、6月になっても美しい花に出会うことができる。

 ラ・フランスは、モダンローズ第1号であるといっても、オールドローズの雰囲気がまだ残っている部分がある。花の形が、ときにやや崩れてくしゃくしゃになることもあるし、開花しても最後まで開ききらない場合も多い。花が重くて開花するにつれて花が垂れ下がってくるようになることが多いのだが、それはオールドローズによく見られる性質であるともいえる。

 この薔薇の莟がうまく開かずに、そのままの状態で雨に打たれて傷んでいるのを見ると、いとおしくなる。私は、雨に濡れて傷んだ花や開ききらずに茶色くなっている花を何枚も撮影している。そんな写真を撮っている人はあまりいないのだろうが、見過ごして通り過ぎることができないのである。