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 大山桜は中部地方以北に自生する山桜の一種で、蝦夷山桜ともいう。日本の桜の開花予想の基準となっているのは染井吉野だが、沖縄では染井吉野がうまく育たないので、緋寒桜(寒緋桜)が標準となっており、北海道でも染井吉野に代わって大山桜が開花予想の基準木となっている。

 大山桜は山桜の一種ではあるが、かなりの変異が見られる。花が大きくなったものや花弁の色が白っぽいものから濃いピンク色までさまざまである。寿命もかなり長いようで、静岡県の狩宿の下馬桜は800年以上といわれている。昔、源頼朝が狩に来たときにここに立ち寄ったという伝説がある。

 長野県に桜を見に行くと、有名な桜のほかにも、あちこちで大山桜に逢えるのも嬉しい。西日本の野山でふつうに山桜に出会うのと同じことであるが、関西育ちの私には非常に珍しい桜なのである。今は長野市となった牟礼地区の大山桜は明治時代に植えられた記録がはっきりと残っている桜で、その堂々とした姿には圧倒される。まだ100年は経っていないはずだが、すでに樹勢には衰えが見えはじめていて、寿命には個体差もあるのかと思われる。秋田県の高速道路を走っていたときに休憩に立ち寄ったパーキングにもこの大山桜たくさん植えられていた記憶がある。また、新潟県の十日町から信濃川に沿って飯山に向かって走ると、津南町の道の駅があるが、ここにも大山桜が植えられていた。この桜が咲くころ、周囲にはまだ雪がたくさん残っていることがあって、真っ白な野原を背景に大山桜が咲く姿はなかなかみごとだった。

 この桜はやはり寒冷地に適応して生きてきたようで、例えば、石川県林業試験場樹木公園にも多く植えられているが、樹勢が弱ってきて枯れたり傷んでいるものが目立つ。樹木公園には150種類くらいの桜が植えられているということだが、寒冷地の桜を植えても、夏には高温多湿になる北陸地方ではなかなかうまく育たないようである。やはり、もともと自生していた土地に足を運んで鑑賞するのがいちばんかと思う。