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滋賀県守山市の近江妙蓮。
「近江妙蓮」は滋賀県の花にも指定されている蓮で、花弁が2,000~5,000枚にもなるという珍しい蓮である。この花弁は雄蕊が変化したもので、したがって、この蓮には種子ができない。室町時代からこの地の大日池に伝わる蓮で、室町幕府の将軍家にも献上されたらしい。明治時代の終わりころ、この蓮が咲かなくなってしまったのだが、大賀蓮の発見者である大賀一郎博士の尽力により、江戸時代に石川県金沢市の持明院に分根されていた妙蓮を里帰り移植させて、その後また花が咲くようになったという。ただし、金沢市の持明院には、寺の蓮は唐の時代に中国から伝わったものであるという説明板が立てられている。 この蓮は、蕾のときは緑色であるが、開花すると淡いピンク色になる。しかし、ほかの蓮とちがって、パッと大きく開くことはまずない。蕾と同じような形だが、全体が白っぽくなり、ピンク色が混じるようになると開花した、ということだろうか。 ふつうの蓮は、パッと開いて4日目にはらはらと花弁が散ってしまうのだが、妙蓮は花の外側の花弁がはらはらと剥がれ落ちてはゆくのだが、数日間同じである。はらはらと剥がれ落ちる程度では数千枚の花弁はちっとも減らない。やがて、花弁が残ったまま花が枯れてゆくのである。それが12枚目の最後の写真。このような花殻のようなものが開花中の花に混じっていくつもまっすぐ立っている。花が枯れると軽くなるのだろう、茎が倒れて横たわるということもないのである。 全ての花に雄蕊がないので種子ができない……のではあるが、ごく稀にふつうの花(「常蓮(じょうれん)」という)が咲くことがあるらしい。双頭蓮の出現よりもずっと稀なことのようである。常蓮が出現したことも、この蓮を管理してきた田中家の文書には記録があるという。 |