エッセイ(短歌) 短歌のデータベースについて

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 明治以降の短歌について、データベースのようなものを作った。現在約二十二万首を収録している。『現代短歌全集』(筑摩書房)を基礎として、斎藤茂吉、釈迢空、北原白秋、若山牧水、佐藤佐太郎、寺山修司、前登志夫、永井陽子などの全集・全歌集を、さらに、歌人の個々の歌集をそれぞれ完本で収録した。総歌集数四百六十冊、歌人数は二百二十六人である。収録作業は現在も続けている。

 収録した作品はできるだけ原典に忠実に文字を保存するようにした。旧字体であったり、変体仮名であったり、あるいは、作者が独自に用いた文字(記号)でも、なるべく印刷された原典を忠実に保存するように努めた。手元のパソコンの環境では表示できない文字については外字を作成した。

 出版された書籍に印字されている文字をできるだけ忠実に記録保存するようにしたが、初版の単本の歌集でないかぎり、出版当初の姿を見ることはなかなかむずかしい。『現代短歌全集』にしても、このシリーズが刊行されるときには編集者によって、印刷物としての整理がされているからである。また、作者自身が、同じ作品を後に再販したり、全集や選集に入れるときに作品に手を入れる場合もある。それでも、作者の文字に対する考え方がはっきりと残されている場合もあるので、なるべくそれらの痕跡を保存するように努めた。

 このデータベース(のようなもの)が一定のボリュームになったので、更新作業は続けながら、これからは明治以降百数十年を経た現代短歌について気がついたことを書きとめていきたい。

 手始めに、短歌に詠まれている植物について調べてみることにした。植物といっても、花もあれば実や葉、幹や枝といったものもあるので、広く植物を詠んだ作品ということで、データベースから検索抽出してみた。ところが、実際には植物の名前を漢字で書いたり平仮名、片仮名で書いたりとさまざまに表記しているので、抽出作業がたいへんである。例えば、桜の場合、「桜」「さくら」「サクラ」「櫻」「チェリー」などの表記が考えられるので、まずはそれらの文字を含む作品を広く抽出したところ、かなりの数がヒットした。その中には「あさくら」という地名あるいは人名を平仮名で表記している場合もあるので、そういうものを外していく作業が必要になる。また、「花」あるいは「はな」と表記しているがじつは桜を詠んでいる場合もあるので、それらも抽出することになる。

 それらを整理すると、桜の場合、三千首弱が残った。二十二万首のうちの3千首で桜が詠われているということになる。しかし、直接文字で表記していなくても、桜を歌っている場合も考えられる。連作という手法があるからである。ただ、ここまで広げて考えはじめると、当初の文字そのものによって、という趣旨から外れていくことになりかねないので、現時点では保留することにしたい。

 約三千首の「桜」の歌が、誰によっていつ頃作られたのか、歌人によって「桜」と表記しているのか、あるいは「さくら」や「花」なのか、一人の歌人のなかでは桜の歌はどのくらいの頻度で登場するのか……。アプローチはいろいろありそうである。その他の植物についても、まだ作業中ではあるが、一つにまとめたいと思っている。